2010年4月20日火曜日

屈辱の一瞬

 完全犯罪! それは高嶺の花という言葉から始まった。男は貧しさの中で奮闘し見事に地獄の底からはいあがり娘に求愛をする。絶え間無い求愛と全ての人にひと目で知れる男の誠実さのために娘は身体に反して男になびき始め、そこにいくつかの神の奇跡が介入し、・・・・・・パレード! 身内の喜びと陰口! 友人たちの喝采! 男の溺愛ぶりはだれにでも幸せと恥ずかしさと奇跡のごったまぜを感じさせた・・・・・・花嫁にさえ。しかしいかんせん、違いすぎた。祭りが過ぎるとそこから奇跡の醸し出す空気が消え去り、現実と呼ばれる過酷な裁き手が待ち受ける。娘の社交生活から男には絶え間無い嫉妬が与えられ、男の愛情はより深くより根を張った素晴らしい樹木にまで成長し、世間には見えない不協和音が出来立ての家庭に響く。そこに強盗が現れ! 娘を殺し金品を奪い逃走し、男にこの街で最も黒い喪服を着せる。妻を殺した夫はこの世の何にも比すことのできぬ愛する者の骨を常に身に掻き抱き、非人道的な愛をその無機物に捧げ続けた。男はその花嫁だった骨を冒涜し、匂いを嗅ぎ、さすり、断末魔のつかの間の映像をいとおしむ! ・・・・・・ある日、そのたえなる感覚と魅惑的な腐臭を放ち続けたその骨がほんの一瞬・・・・・・むろんそれはほんの一瞬間だけだったが・・・・・・男に嫌悪を感じさせた。その前日、彼はどうということもない平々凡々の女に求愛されたのだ・・・・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿