2010年4月20日火曜日

つんぼの悲劇

 すべての恋人たちは自分たちの愛こそが最も甘くもっとも切なく最も世間に邪魔されており最も真実で最も成り立ちがたいと思うものだが、確かにこのカップルの恋は周りが認める形でそうであったと言わざるを得ない。また、どこがそうであったかと言う問いにも答えることもできない。ともかく、そのお互いの想いは甘く燃え上がり、ささいな買い物が今生の別れであり、高まれば嫉妬に狂い、友人の賢明な助言は二日もすれば二人の愛を引き裂く権謀術数なのだと確信され、ささいな事で歓喜の絶頂へあるいはささいな事で絶望と争いの中へ、そういった関係だった。弦の振動のように二乗に反比例するその高まりは彼らにとっても拷問の法則でもあり愛の法則でもあった。・・・・・・愁嘆場!・・・・・・確認!・・・・・・抱き合い! だれが彼らにとって死というものがいかに身近であることを知っていただろうか。・・・・・・嵐と二日雨の中間のような日に、恋人の部屋から聞こえた何やら分からない音を汚らわしい音だと認知した女は正気を失い、そのまま首をくくって死んでしまう。女が縊死したことを知らない男は変化と奇跡と歓喜と不変の神である女の帰りを待ちながら、女が拾ってきてもう女性になった愛らしい猫と遊び続ける・・・・・・

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