2010年4月20日火曜日
鬼
母は言った。「最近、近所に、鬼が出没するから、スコップを渡しておくから」「銀のやつ?」鬼は人を食べる。鬼は外骨格だ。鬼は群れる。鬼はハンミョウのように動く。鬼はアリのように人にしがみつく。ぼくは、町の裏のほうに鬼の巣があることを知っている。ある日、いとこの家に、鬼対策の話をしに行った。帰りに、その従兄弟の子と、町の裏を通って、ぼくの家に向かった。ぼくの家には謎とスコップがあるから。ぼくは鬼の巣を発見した。くぼみから見上げたところにある半径五十センチぐらいのコンクリートの筒の奥に十体ぐらい鬼がひしめいているのが見えた。従兄弟の子は小さいのに、ぼくはスコップを持っていることをいいことに誘ったのだ。正直言ってぼくは、スコップをうまく使って鬼を殺すことができるか自信がないし、本当に鬼はスコップを恐れているかすら怪しいものだ。でも従兄弟の子が鬼の巣を見上げている様子はとてもかわいくて抱きしめたいぐらい。ぼくは恐ろしかった。もしも、もしも、この子がいつの間にか消えてしまっていたら。ぼくは、きっと、傷つき崩れ落ちてしまう。ぼくは海辺の子のこの家の前で誓うだろう。鬼を罠にかけて、ありの巣を水浸しにするように、一網打尽とする機械を発明するまで枕を高くして寝ない、そして、その機械を使って目的を達成したらぼくもその機械にかかって自殺することを。そのとき、一緒にやってきていた妹が、早く帰ろう、と言った。
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