2010年4月20日火曜日

 山奥のまた奥の滝の上の丸太小屋を住居と定めた猿のキッキは、朝目覚めると常に太陽に命を吸い取られる。そして目をひん剥いて白目になって両手無様に倒れて、運の悪いときには頭を石にしたたかぶつけて、閻魔様のところまで往復マラソンと来る。だが、キッキは実は死ねない。何故か分からないが、遺伝子変異か知らないが、まったく老化をしないし、不死身に肉体を持っている。そのような身に生まれつき、もう既にたくさんのことをたくさんの時に嫌悪して、時には何もまったく起こらないものの、そんなこんなで森の深い霧の中に小屋をおったてたのだが、万物の霊長たる太陽はいまだにキッキをそのオレンジ色の舌でなめてくるのだ。太陽のオレンジ色の舌は梅雨時には真っ白な蒸気を立ち込めさせ、森からその永遠性を奪い、あるいは有機体に火をつけてたくさんのサラマンダーにその小さな舌をして気持ちのいいが悪いことをさせる様子は実に部外者には絶景だといえる。キッキは夏の間はずっと倒れている。そしてある朝起きると雲と月が太陽を覆い隠してくれているのを見る、その時点でもうそれが朝ではないのでキッキはその度に何か自分の気づかないところで騙されたような絶望を味わったものだ。が、そのうちに急に身体が自由になる。外はいまだに薄暗く、太陽のあるはずの地点を見ると黒い穴から太陽は頻りと外に出ようと無数の手を伸ばしている。キッキは木々を飛び飛びはしゃぎまわる、千本以上の木々で遊びまわる。ところが、最後の木には弱りつつも生き延びたサラマンダーがいて、それは実に米粒ほどの大きさだった。しかし必死で生きようとして小さな舌で有機体を取り込もうとしている。キッキはそれを踏み潰そうとしたのだが、大きな力をどこからともなく感じて、もういいや、と再びどこかに遊びを求めて立ち去ってしまう。今度は風の精霊のシーフィーがやってきて、途端、小さな火を煽って森は明るく赤く燃されて光った。ありとあらゆる樹木が赤く熱せられた、そんな中、はじめてシーフィーは空中高く太陽に向かって飛ぶことが出来て、その悲痛な愛のこもった両手で月と雲を取り払う事が可能となったのだ。キッキは汚らしい砂漠の廃墟で死体となって干からびているというざまになった。太陽の境界が大地へと近づき、あたりを含んでいくうちにキッキは再び永遠へと旅立ちはじめる、こうして地球最後の形あるものとしてのロボットキッキはまた何度も何度も死にながらもロケットの操縦桿を握って飛び回ることになる。

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