2010年4月20日火曜日

改竄

 大火事があり、ひとりの少女が助けを求めてわめき叫び、刻々と声の力を弱めてゆく。怠惰と臆病と自立心の欠如の気まずい雰囲気のなか、一匹の犬がさっそうと猛火の舌をくぐり抜け地獄の口の中に飛び込み、少女をくわえて戻ってくる。……歓喜……脱力……表彰……人々はどっと明るさを取り戻し、笑い喜ぶ。が、おもむろに再びまたその犬は崩れゆく牙城と化した屋敷の絶望の城門をくぐり、本能的に死の道をたどり炎の中へと消え去る。……あぜんとした人々の前に奇跡的に戻ってきた犬の口には、人形がくわえられていた。人々は笑いをやめ、奇妙な沈黙の中に取り残されるのを感じながら、かの犬を見つめていた。

(物語「消防犬」より)

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