2010年4月20日火曜日

奇跡の昇進

 唖で聾でろくにしゃべれずびっこで奇形な男が自分の身体やその障害をネタにしてお笑い界で大デヴュー! 各種マスコミ絶賛! 海外障害援助隊からの祝電! 各地の障害に悩む子供たちからの熱狂的なファンレターや耐えることを知らない求愛者たち! 正常者・非正常者問わず大人気! うなぎ登りの株! 「誠実そうな男」「抱かれたい男」投票一位! 彼は本当に笑いのつぼを知っており、彼のコーナーはボタン要らず(何と地球に優しいことだ)の大盛況! パラリンピックに多大な影響を与え、障害者たちには夢と正当化を与え、紅白にはちょっとした感動を、24時間テレビには笑いと歓喜と激情と絶え間無い興奮の手紙を舞い込ませた! 彼の魔法のようなアドリブは文字にならない教科書として芸能界に流布し、バラエティやドラマにおいては独自のジャンルを開拓させた! ・・・・・・そして彼は自殺した。彼に終始好意的であり続けたある週刊誌は一週間ごとに新たな死因を発表する・・・・・・ 隠されたイジメ、隠された嫉妬、隠された不仲、隠された愛人(またはそれに付随する隠された性的癖)、隠された金銭の動き、隠された孤独・・・・・・ 彼の生涯に対する苦慮・・・・・・ 苦悩・・・・・・ だれにも暴かれなかった最も親しい正常者である友人に当てられた手紙(これが唯一の遺書と呼べるものだった)にはこういう台詞があった。「愛する仲間たちは本当に心からわたしの成功を喜んでくれた・・・・・・ が、しかし、最後までわたしは彼らのことを信ずることはできなかった。・・・・・・」だれの?

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