ナルシス「ぼくはのどを万力で締め上げるほど馬鹿じゃない。妖精エコーに言葉を預け、忘却の水を飲むためにうめき続けるだけだ。
なあ、エコーよ。もうぼくにかかわるのは止して、おまえの天分である音楽に身を入れるがよい。」
エコー「いいえ。わたしはあらゆる魂に束縛されません。声だけがわたしを縛り付ける・・・・・・そして時間だけがわたしの作用素。」
ナルシス「おまえは忘却の水を飲んでいないのかね。」
エコー「・・・・・・」
ナルシス「しゃべれよ!」
エコー「・・・・・・」
ナルシス「ぼくは忘却の水を飲み、声にならぬ声でうめく。するとエコーがその声を実にみすぼらしく復唱する。糞尿の立てる匂いのような音だ。」
その声「無視された・・・・・・恥ずかしい・・・・・・殴られて恥ずかしい・・・・・・無意味・・・・・・意味なし・・・・・・言い訳できず・・・・・・迷惑できず・・・・・・存在できず・・・・・・無視された・・・・・・ぼくはいつも死ぬまでずっと他人の言うこと聞いて生きゆく・・・・・・悲しい・・・・・・ケンカ・・・・・・イジメ・・・・・・逃げろ・・・・・・盗んで蹴っていじめて泣いて・・・・・・貢いで褒めて笑わし無視し・・・・・・だれもぼくを見ず・・・・・・恥ずかしくて恥ずかしくて・・・・・・これは罪だ・・・・・・無意味は罪だ・・・・・・ぼくはいっそ存在を消した方がよろしい・・・・・・死ねばよろしい・・・・・・死んでも視線ゼロ・・・・・・恨まれ蹴られ憎まれ役に立ちたくて恥ずかしい・・・・・・かってやる・・・・・・おまえらをかってやる・・・・・・飾ってやる・・・・・・おまえらを飾ってやる・・・・・・成功の周りをうろつき・・・・・・恥辱に染まり・・・・・・地球が恥辱に染まり・・・・・・後悔の呪いでうめき・・・・・・こぶしをゲロで埋め・・・・・・眼をキリで突き刺し・・・・・・ぼくはおまえらが呼吸できない悪い空気になって呪い殺してやる・・・・・・」
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