2010年4月20日火曜日

超能力者

 ある時代・ある土地に、人類史上空前絶後の強い意志力・精神力をもった超能力者がいた。彼の名声はというと、絶頂でもあり標準的でもある。・・・・・・というのは名声ほど簡単に操れるものとてないからである。すなわち、彼の能力はそれほどのものであった。他人の心や外界への力場の投射に飽きると彼は、自らの本能の赴くままに暮らすことを選んだ。彼にはなにもかもがいかに単純に思われたことだろうか? 彼の前にはいかなる開かれぬ問題もなく、遂げられぬ欲求とてなかった。・・・・・・退屈・・・・・・倦怠・・・・・・痛み・・・・・・ 彼は高山のごとくうぬぼれを高めながら身を切るような没落への欲望に悩む。彼は絶望が閾値まで高まった瞬間彼の前人未到の稀有な神からの贈り物であるところの意志力・精神力を込めながら、こう祈りを捧げた。「おれの思い通りになれ、わが世界よ!」そしてこのような能力にはあるものだが、それが届いたという強烈な確信がみなぎり、歓喜が股間から天頂まで貫く。放心した彼が再び世界を微妙な期待とともにうち眺めると・・・・・・ 人々の流れ・・・・・・眠くなるような売り子の呼び声・・・・・・突っ立っている間抜けな男の横顔。なんということ。何かがうまくいっていない! 何も起こっていないぞ! 変わらない・・・・・・いや変わったような・・・・・・どうでもいいふうに・・・・・・むしろ単調に・・・・・・よりつまらなく・・・・・・より退屈でより倦怠でより痛みに耐えがたく・・・・・・! ・・・・・・嫌だ!! 彼は今や、無意識のうちに自分の能力を使った。このいやったらしい世の中すべてが嫌だ、嫌だから言うことを聞け! ・・・・・・とたんに男は自分の意志力を失い、普通のくだらない男となって突っ立っていた。

0 件のコメント:

コメントを投稿