父は怠け者ではなかったが、仕事がなかった。月に十日もあればいいほうで借金はかさむ一方であるので、ますます生活保護ですら受けられない。母は怠け者で働こうとはしないし、家のこともほとんどしないのに、だからかえってそうなのであろうか、世間体を気にすることだけは一人前である。三歳年上の姉は病弱でおとなしい人だが、ほとんど病院にいるのであまり知らない。ぼくはもう三年も学校に行っていない。そればかりか、もう半年も家の外に出ていない。家の外に何があるのかも分からない。コンビニとスーパーがぼくの町には一軒ずつあるが、そんな場所に行ってもお金はない。都会なら無料で本を読んだり、ゲームをしたりできるらしいが、ぼくは都会が怖い。この町、ぼくが引きこもっているこの町以外の町について何一つ知らないし、知るのが怖い。どうやって暮らせばいいのか分からないのだ。父は時々パチンコに行く。それが父の仕事以外の唯一の外出だが、そのとき雑誌を持ってきたことがあった。ぼくの教科書はそれだけで、そして外の世界はこの町と違いすぎてとても生きていけそうもない。母が近所中を回って姉の病気についての寄付金を集めて回っている。そのわずかなお金は食費に使われないときには姉のお菓子代になる。ぼくは先月姉を見た。姉が一日帰ってきたときに、ちらりと姉を眺めたとき、こんなに美しくて若い女性を見たのは初めてだ、と思った。ぼくが見るとしたら、老人ばかりで、しかも引きこもっているので、その老人さえめったに見ない。そのうちに、姉は、
「病院に戻して! こんなところは耐え切れない! こんなところにずっといるやつはどうかしてる! 病院に戻して!」
と叫び始めた。何かまずいことが起こったらしい。次の日には再び、ぼくの元には、シーンとした生活が戻って来た。ぼくは台風用の木製窓を開けて換気をすると、空を眺め、そしてつぶやいた。
FAMILYって、FAther! Mather! I Love Youの略ですか?
SILLYって、SISTER! I do Love do Love Youの略ですか?
歌っているみたいで楽しかった。姉の美しい顔をありありと思い浮かべながら、気持ちを込めてつぶやいた。ぼくがいる場所を中心にして五キロの正円を描いたとしてもそこに人間が百人もいないだろうこのすがすがしさ!
題名である
返信削除FAMILYって、FAther! Mather! I Love Youの略ですか?
は、誰かが言っていた言葉をメモにしていたもので、私の発想ではない。