あるとき、Yとご飯を食べていたとき、ぼくはYに物事の真相を捉えるのがいかに難しいかについての話をでっちあげていた。その返礼なのかなんなのか、いきなりYが話し始めたのが次の話であった。
かつて仲のよい友人二人がいた。どんなことについても互いに話し合い、互いに知らないことは何一つとしてないほどだった。二人は政治または文化の方面の道を志し、努力していたが、その努力は実ることはなく、成功は訪れる気配もなかった。しかし二人はそれでも幸福であった。ある日、片方のうちの一人が死んでしまった、そのところに、国の役人がやってきて、
「あなたの今までの仕事を国が認め、是非社会全体のため、国家のためにあなたの力を借りたいと思いやってきました」
といって、高官になることを約束し、ぜひそうするべきことをお願いするのだった。しかし、男は答えた。
「わたしはわたしの仕事を本当に理解できるただ一人の人間を失いました。もうわたしにはその仕事を続けてゆく目標も意味もありません。わたしは自分の仕事でただ一人感心させたい一人の人間を先ほど失ったばかりなのです」
そういって男は説得に応じることはなく、家族からも離れて、ほとんど何をすることもなく生計だけは何とか立てながらそれから後三年生きたが、その後、亡くなった。
ぼくはYのその話を聞いたとき、ぼくが完全に間違っていたことが分かって恥ずかしくなって、黙り込んでしまった。
Yは元気にしているだろうか。
返信削除Yにささげる。