…わたしはお父さんのために三年間も地下で働いています。お父さんは朝の二時にわたしを地下の下のほうに下ろし、翌日の午後の一時か二時にわたしはあがってきます。そして、あしたの朝すぐに仕事にいけるように、夜の六時に寝ます。わたしが入る炭鉱の部分は、入り組んでいて蟻の巣のようになっているだけでなく、鉱層がまるで刃のようになっています。わたしは石炭を背負って、脚立ないしはしごを四つのぼり、やっと炭鉱の端に通じている主坑道にでます。わたしの仕事量は、桶に四から五杯で、桶には四と四の四分の一の百倍の重さだけ入ります。わたしは二十往復で桶をひとつ一杯にします。命令どおりにやれなかったときはムチでぶたれます。身体はきついですが、父さんに見捨てられるのがこわくって、楽なふうに仕事をやろうとするとき、自分をいつも戒めます。戒めるといってもイエス様に祈りを上げたり、マリア様に力をもらったりします。父さんのことが大好きです。すごく優しいので一生一緒に暮らして、大人になればちっちゃな父さんの支えになることがわたしの夢です。上のほうに上がっているときには、大体家族の人たちがいないので、ゆっくり休むことができます。弟がいるときには、いつも弟は怪我をしたり、心が不安定になっているので、ずっとついていなければなりません。ひとりでいるときは、壁に背中をついて半分眠りに入りながらもっと楽な生活のことを考えているときがわたしの一番の幸せで、そんなときに父さんが家にいてくれたら、なみだがでるほど嬉しく感じて、おかしいと思われたこともあったほどでした。父さんは、
「明日があるんだ、きちんと意識を失って、眠るんだぞ」
といってくれます。わたしは自分の家族の人たちほど優しい人たちを見たことも聞いたこともないのでそのことを考えるだけで涙を流してしまいます。家族のことが大好きで、もっと心が強くなったら、自分のすべてを犠牲にしてでも家族のためにつくすようになれたら、と祈っています。でもまだまだわたしのこころは邪悪な怠惰に充ちていますので、倒れたり耐え切れなくなって眠ったりすることがよくあるのが、とてもつらいです。…
(世界史図説資料集より抜粋)
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